お買物探偵団

生産量日本一。宮崎の「ひなた」が生んだ「せん切り大根」。絶品です!|からだに美味しいお取り寄せ(25)

出典:筆者にて撮影

 

大根は薬膳において、じつにさまざまな効能がある野菜。胃の調子を高めて消化を促し、胃のもたれや腹部膨満感の改善に役立ちます。食事の際に、お味噌汁の具として使ったり、大根おろしを添えるなど献立に取り入れておくとよいでしょう。

 

また、夜遅く食事を取る場合も、大根を取ると消化が早まるのでおすすめ。日頃から夕食の時間が遅く、メタボ気味という人にはダイエットにもつながるテクニックなのでお試しを。

 

そして大根はストレス改善に威力を発揮する野菜です。気の巡りをスムーズにしてリラックスさせてくれます。体の上部に上がった気を下げる働きが強いため、特にイライラしているときのクールダウンを促します。

 

そのほか、呼吸器系のトラブルにも良く、せきを鎮め、喉の乾燥を防ぎ、腫れや痛みを解消する働きにも優れています。

 

健康に優れた大根。スーパーが閉まって買えない……、あるいは大根の皮をむくのが面倒……!というときに便利なのが「切り干し大根」。水で戻すだけで、24時間手軽に大根のパワーを摂取できます。

 

切り干し大根(西日本ではおもに、「せん切り大根」の名称)生産量日本一を誇るのが宮崎県。

 

切り干し大根というと、「大根をスライスして、機械で乾燥させたもの」と思う人もいるかもしれませんが、とんでもない! 今回は手間ひまかけたこだわりの宮崎県のせん切り大根の魅力をご紹介します。

 

宮崎の「ひなた」が育んだせん切り大根

 

出典:筆者にて作成(宮崎名産のせん切り大根は、宮崎市及び国富町で育まれています)

 

宮崎県におけるせん切り大根の歴史は、明治のころに愛知から技術が伝えられたとされています。昭和に入ると全国の市場を占める一大産地になりました。生産地の一つである宮崎市清武地域は南部に荒平山をはじめとする鰐塚山地が連なり、鰐塚山を水源とする清武川が町の中心部を流れる自然豊かな場所です。

 

11月下旬ごろから、河川敷に千切りされた純白の大根が、帯のように干し台に並ぶ姿は、宮崎の冬の風物詩。南国宮崎に、「溶けない雪」が舞い降りる美しい光景が広がります。

 

出典:田野・清武地域日本農業遺産推進協議会 (清武町の河川敷にならんだ、せん切り大根の干し棚)

 

そう、宮崎のせん切り大根は、伝統的な「天日干し」。冬の暖かな日差しを吸って完成するのです。

 

出典:田野・清武地域日本農業遺産推進協議会 (陽光にきらめく、みずみずしい大根)

 

「このあたりは、良質なせん切り大根をつくるためにとても適した地域です」と語るのは清武地域でせん切り大根を生産されている松田真郎さん。

 

「山から冷たい西風が吹き、日照時間が長い。冬も雨が少なく温暖で、大根が凍ることなくカラリと乾燥します。旨み、甘みがあって食感もよく、見た目も真っ白で美しい千切り大根に仕上げるためには、この気候風土が欠かせないのです」。

 

せん切り大根づくりは、まず大根の栽培から始まります。当然ながら「よいせん切り大根は『よい大根づくり』が肝心です」と松田さん。清武界隈の土壌は、黒色火山灰の黒ボク。弱酸性の成分を多く含んでいます。保水性や吸水性がよく、冬場に作付けされる大根の肉質をやわらかくする特質があり、大根そのものの栽培にも適した土地なのです。

 

切り干し作業の時期から逆算して、9月上~下旬に種をまき、間引き、追肥などの作業を行いていねいに育てます。

 

出典:松田真郎さん (9月ごろ播種。おもに品種は、青首大根)

 

12月、北西の風が吹き始めたらいよいよ収穫。収穫は手作業。11本引き抜き、続いて葉などの不要な部分を切り取ります。こちらも手作業です。

 

出典:田野・清武地域日本農業遺産推進協議会 (大根の収穫風景。手作業で行う)

 

そののち、ブラシのついた機械や水槽で洗浄。翌日午前中に、河川敷で切り干し作業を行います。

 

12月に入ると、河川敷に西向きに傾斜をつけた幅2メートル、長さ100メートルの『干し棚』を組み立てます」と松田さん。

 

出典:田野・清武地域日本農業遺産推進協議会 (干し棚は、生産者が自ら重機を使って行う)

 

高さ2メートルほどの竹を組み、1週間がかりで1キロにもわたる干し棚が完成。

 

キャタピラ付きの車体に「吹き上げ機」と呼ばれる機械を乗せ、大根を長さ10センチ程度に細切りにしながら、棚の上に広げていきます。1日半自然乾燥させて完成。

 

出典:田野・清武地域日本農業遺産推進協議会 (切り干し作業を行う松田さん。きちんと干し棚に大根が広がっていることが大切)

 

もっとも重要なのは「切り干し作業のタイミング」と松田さんは語ります。「天気をよむことはとても重要です」。せん切り大根の大敵は「雨」。作業は日光があたり、スピーディーに乾燥する西風が吹いて晴れる日がベスト。「しっかりと早く乾燥したものは、色目も良く、最良の品質です」と松田さん。

 

「良いせん切り大根ができたかどうかは、どんな風に判断するのですか?」と松田さんに尋ねてみました。「見た目が真っ白で、口に入れると甘い。噛めば噛むほど甘味がでてくるものが最高ですね」。

 

天候とのにらめっこを続けながら、大根を収穫しては、干すという作業が2月下旬まで続きます。

 

大変な作業だけれども、宮崎伝統の干し野菜を手掛けることは自分にとって「とてもやりがいのあること」だと松田さんは語ります。

 

せん切り大根は、収穫から乾燥まで、匠の技で「宮崎の風土」を使いこなす「伝統工芸」のような加工品なのです。

 

清武・田野地域は、2021年、「宮崎の太陽と風が育む『干し野菜』と露地畑作の高度利用システム」として日本農業遺産にも認定されました。

 

田野地域でおもに生産される「漬物用の干し大根」も、宮崎が生産量日本一を誇ります。

 

出典:田野・清武地域日本農業遺産推進協議会 (田野町の「大根やぐら」。竹で組んだやぐらに、大根をかけて並べて、漬物用の干し大根をつくる)

 

たい肥を利用した土作りを行いながら、約100年前から大根を干し野菜として販売することにより、地域の収益の安定につなげ、大根を干す景観も観光資源などに生かした地域全体の取り組みが評価されたのです。

 

出典:田野・清武地域日本農業遺産推進協議会 (大根やぐらのライトアップも行われ好評)

 

このことについて、松田さんは「地道に行ってきたことが評価されてとてもうれしい。誇りに思っています」と語ります。

 

やさしい味わいの「せん切り大根」は和洋中多彩に使える

 

宮崎の宝物ともいえる、たっぷりと日差しを吸ったせん切り大根。「1本の大根からできあがるせん切り大根は、わずか100gです」と松田さん。「そのぶん、旨みが凝縮されています。ビタミンB1、B2、カルシウム、カリウムも豊富で、食物繊維も豊富。もっとみなさんに食べていただきたいですね」。

 

松田家では煮物以外にも、味噌汁に入れて食べることが多いそう。「せん切り大根から、だしが出て美味しいです」。宮崎の郷土料理「冷や汁」に入れるのもおすすめだとか。

 

わたしも宮崎の、せん切り大根の「だし」をいかした薬膳レシピを作ってみました。「せん切り大根薬膳鍋」です。

 

鍋にだし汁を入れ、豚肉、春菊、ネギ、せん切り大根をそのまま入れて加熱、仕上げにゆずの皮を散らします。

 

意外に思うひともいるかもしれませんが、せん切り大根は水で戻さなくても煮るとほどよく食感が残り、旨みも出て美味しくいただけます。だし汁には酒、あえて少々のしょうゆのみ。味付けは、「塩」がおすすめ!

 

まず、ぜひだしを飲んでみてください。驚くほど、やさしい甘みと旨みに驚くはず。みりんなどは不要です。豚肉のコクを吸い込んだコリコリした食感のせん切り大根は、おだやかでマイルドな癒し系。クセがなく、しなびた感じはゼロ。宮崎産の美味しさをダイレクトに堪能できます。「しょうゆでこの美味しさを消したくない!」そんな味わいです。

 

出典:筆者にて撮影(せん切り大根にストレス改善によい春菊、ゆずを組み合わせた「せん切り大根薬膳鍋」。ゆずこしょうをつけたり、ごま油をかけても美味しい)

 

せん切り大根は、エスニック風の炒め物にするのもおすすめ。「せん切り大根のスパイシー炒め」はいかが? オリーブオイルで、にんにく、しょうがとともに炒め、ナンプラーか、しょうゆで調味、カレー粉、クミンシードを振って仕上げます。お好みでパクチーを添えて。

 

スパイシーな風味がベストマッチ。ビールのおつまみにぴったりです。レモンをきゅっとしぼっても美味しくいただけます。

 

出典:筆者にて撮影(せん切り大根のスパイシー炒め。冷めても美味しいのでお弁当にもおすすめ)

 

意外かもしれませんが、乳製品やフルーツとの相性もバッチリ。宮崎ならではのフルーツ「完熟きんかん たまたま」とヨーグルトを使った「せん切り大根のフルーティーサラダ」にしてみました。

 

戻したせん切り大根と、スライスしたたまたま、セロリ、赤玉ねぎ、チャービルを合わせて、ヨーグルト・オリーブオイル・レモン・塩・こしょうを混ぜたドレッシングで和えます。

 

たまたまの甘酸っぱさ、クリーミーなヨーグルトソースがせん切り大根に見事に華を添え、白ワインやシャンパンにもピッタリの味わいに。女子会におすすめの一品です。

 

出典:筆者にて撮影(せん切り大根のフルーティーサラダ。かんきつ類もストレス解消におすすめ)

 

どう使っても、「やさしさに満たされた」味わいになるのが、宮崎のせん切り大根のいいところ。縁側にさす日差しのような、おだやかな宮崎の「ひなた」が隠し味。ぜひ、いろいろな料理で味わってみませんか?

 

 

■宮崎名産の「せん切り大根」は、JA宮崎中央公式サイトからお買い求めください。

 

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