災害時に命を守るために準備できること(1)
出典:photoAC
近年増えている自然災害による被害。1月17日は1995年に阪神・淡路大震災が起きた日でもありました。今回は大手前大学総合文化学部考古学・地理学専攻の貝柄徹教授が呼びかけている、自然地理学から考察した命を守る行動をご紹介しましょう。災害から自分や大切な人を守るために、今改めて対策を見直してみませんか?
もくじ
1時間降水量50mm以上の年間発生回数グラフ
出典:大手前大学PR事務局
※気象庁データより作成。直線(赤)は長期変化傾向(この期間の平均的な変化傾向)を示す。
自然災害による被害は近年増加しています。特に大雨による災害は毎年のように発生しており、気象庁によると1時間の降水量が50mm以上となる年間の回数は「1976年から1985年」と「2011年から2020 年」で比較すると、直近の10年間は約1.5倍の発生回数となっています。また、2020年は福島県、宮城県、和歌山県、岩手県、東京都でも震度5を超える地震を観測。このように増えている災害から身を守るために今一度対策を見直す必要があります。
専門家が呼びかける、命を守るための対策(災害時に命を守るためにできること)
大手前大学 総合文化学部考古学・地理学専攻の貝柄徹教授は、災害時に命を守るために、以下のことを呼び掛けています。今日からでも確認できることばかりですので、いざというときに慌てないために、各家庭で理解し準備しておくことが必要です。
1. 土地が安全かの目安を知る
今の地形や過去の土地の様子を知ることで、危険の予測に役立ちます。
2. 正しい避難の仕方を知る
災害によって避難の方法は異なります。小さな勘違いが大きな被害を生む前に確認が必要です。
3. 食品だけではない、備蓄品やローリングストックのすすめ
食品に焦点が当たりやすい備蓄品やローリングストックですが、日用品のストックも大切です。
家選びと安全チェック(災害時に命を守るためにできること)
これから引っ越しを考えている人もそうでない人も、今住んでいる場所やこれから住もうと思っている土地の特徴を知れば、災害時の危険を予測することができます。以下のポイントをチェックしてみてください。
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1. 土地が低いかどうか
日本は海や川の水面よりも低い土地に市街地が広がっている地域が多いです。海抜や標高、さらに近くを流れている川との関係を把握するなど、土地の高低を調べることが重要です。備蓄品や機器類のバックアップ等は2階や3階に置いておくこともおすすめです。また早めの避難行動をとるようにし、家の前の道が冠水する前に安全な場所へ避難する用意をしてください。
2. 家の後ろに山や、急な斜面がないか
このような土地は、大雨や地震の際、土砂崩れが起きる可能性があります。備蓄用品などは斜面から離れた部屋に置いておくなど、いざというときのための工夫が必要です。
3. 昔その土地がどうであったか
古地図を見ることで、以前の土地の様子を知ることができます。沼地を埋め立てて造られた土地であれば、地震の際の地盤沈下や液状化の危険などがあるため、十分な対策をとる必要があります。古地図などは、ネット上で現在と地図と比較しているものがあったり、地域の図書館にあったりしますので、ぜひ探してみてください。
土地の安全性を知るための必需品、ハザードマップ(災害時に命を守るためにできること)
その土地の安全性を知るための最も簡単な方法は、自治体のHPや国土地理院のサイトからハザードマップを見てチェックすることです。
出典:大手前大学PR事務局(東京都港区の揺れやすさマップ)
ハザードマップには、浸水被害、液状化被害、揺れやすさなど、さまざまなタイプがあります。
※国土地理院ハザードマップポータル をご参考に。PCでご覧になることをおすすめします。
正しい避難の仕方(災害時に命を守るためにできること)
災害が起こった際、災害の種類によって避難行動は大きく異なります。その小さな勘違いが大きな犠牲を生んでしまうこともありますので、きちんと確認し、いざというときに備えてください。
◆地震の場合
出典:大手前大学PR事務局
(参考)気象庁データ
※PCでご覧になることをおすすめします。
家庭では、頭を保護し丈夫な机の下など安全な場所へ。あわてて外に飛び出さないようにしましょう。また、無理に火を消そうとしないことも大切です。屋外ではブロック塀の倒壊や、看板や割れたガラスの落下に注意してください。
◆津波の場合
出典:大手前大学PR事務局
(参考)気象庁データ
※PCでご覧になることをおすすめします。
津波の高さが強調されますが、速いということを認識してください。そのため、より高いところを目指して逃げましょう。津波は繰り返し襲ってくるので、津波警報が出ている間は避難を続けること。最初の波より後に来る波が大きいこともあります。揺れを感じていなくても、津波警報を見たり聞いたりしたら急いで逃げましょう。揺れが小さくても大きな津波が起こることもありえます。
◆大雨・台風など集中豪雨の場合
出典:大手前大学PR事務局
(参考)総務省消防庁データ
※PCでご覧になることをおすすめします。
土砂災害や洪水被害の危険性が認められる場所を、市町村等のハザードマップで確認しておきましょう。学校や公民館など、避難場所として指定されている場所への避難経路を確認しておくことも大切。避難するときは、持ち物を最小限にして、両手が使えるようにして、避難にあたっては、大雨が降っていたり、浸水している場合もあるので、慎重に行動しましょう。
食品以外にも備蓄品やローリングストック(災害時に命を守るためにできること)
備蓄品やローリングストックというと食品に焦点があたることが多いですが、日用品も忘れてはいけません。長期間の避難や、孤立し救援を待っている間など、用意をしておくだけでいくらかのゆとりが生まれるアイテムがあります。
・お米などの最低限の食品
お米などある程度保存の効くものは少し多めに買い置きし、ローリングストックを。お菓子なども用意しておくと、食欲がないときや小さなお子さんがいるときに役立ちます。
・簡易トイレや生理用品
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災害時、食事に次いで問題となるのが排泄です。浴槽に水を溜めておく、というのも方法のひとつですが、そもそも配管に被害があった場合トイレそのものの使用が難しいこともあります。貝柄先生のおすすめはアメリカ軍が使っているような砂を利用したトイレ。 おむつなどで使用されている吸水ポリマーを使用したものよりも手に入れやすい価格なので、家族全員×数日分をストックしておきやすいアイテムです。通販等で購入することができます。また女性の場合は生理用品も多めに用意しておくと安心です。災害支援用品は食事などが優先されるため、生理用品が来るのは遅くなることが予想されます。普段から多めに購入し、1~2カ月ほどが賄える分を用意しておくのがおすすめです。
・カイロや毛布など寒さ対策アイテム
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秋~春先の災害の場合、防寒対策も大切です。大規模災害ではしばらくの間、電気やガスが使えず暖を取る術がなくなることも。寒さで体調を崩してしまわないためにも、カイロや毛布なども用意しておく必要があります。毛布は大きいものを数枚用意しておけば、避難所での目隠しにも使うことができ、プライバシー確保に役立てることができます。
・トイレットペーパーや消毒用アルコール、カセットコンロなどの日用品
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意外と忘れられがちなのが日用品です。トイレットペーパーはティッシュなどの代用品にもなるので、多めのストックがおすすめ。また災害現場は衛生状態が悪化することがあっても、水を節約する必要があるなどで十分な手洗いができないことも。消毒用アルコールがあると安心です。また避難所によっては使用ができないこともありますが、自宅で被災期間を乗り切る場合、カセットコンロと予備のカセットがあると便利です。災害時でも温かい食事を摂ることができるだけで、ほっとひと息つくことができます。
水のストックは分散させてリスクヘッジ(災害時に命を守るためにできること)
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災害時、命をつなぐ重要な存在である水。ストックされているお家も多いと思います。水のストックとして必要な量は、1人3リットル×3日間。これらのストックは、一か所に固めず、いくつかの部屋に分散して置いておくことも大切です。備蓄をしてあった部屋が崩れたり、出入り口が塞がれてしまった場合、せっかく備蓄しておいた水を使うことができません。それを防ぐため、複数の部屋に分散させておくと安心です。
貝柄 徹教授/大手前大学総合文化学部考古学・地理学専攻教授
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