60代。火災保険に入らなくても何とかなる? |老後のマネー安心に(2)

出典:編集部にて作成
シニア世代の大きな悩みごとのひとつが「老後のお金」に関するあれこれです。
毎日のように、ファイナンシャルプランナー佐々木先生のもとには、老後のお金まわりの相談が寄せられています。その中から、みなさまにもきっと役立つ相談案件をこちらで紹介します。金融の知識は〝0〟で大丈夫! 気軽に、一緒に勉強して、老後の安心づくりを進めましょう。
もくじ
【今回のご相談】火事を起こしても賠償請求されないことを知りました。改めて火災保険は必要なんでしょうか?
■年代:60代 ■性別:男性 ■相談カテゴリ:ストレス・悩み・暮らし
───今回ご紹介するのは、火事を起こしても賠償請求されないことを知り、改めて火災保険のことを考えてみたいというご相談です。
「火災保険について、考えさせられる出来事がありました。友人の実家が火災になり全焼しました。住んでいたのは、友人のお姉さんです。なんとか外に出て無事だったとのことで、本当に良かったと安堵しました。ですが、喉の痛みと恐ろしい体験をして精神的にまいっているそうです」
「火事で危険なのは、火より煙だということを私も聞いたことがあります。煙には有毒な一酸化炭素が含まれているため、吸い込むと一酸化炭素中毒になるとか……。高温の煙による気道熱傷になるとも……。できれば、そんな経験はしたくないものです」
「出火原因については、必要以上には聞きませんでしたが、よく分からないということでした。隣家に被害が出なかったことは幸いだったと話していました。火災で他人に損害を与えてしまっても損害賠償責任は負わないと言っていましたが、本当なのでしょうか?」
「火災保険には入っていなかったそうです。年金生活だったこともあり、更新手続きをしないまま過ごしてしまったようです。現在は、収入が無く住む所もない人が優先して住めるところで生活しているそうです。そんな施設?があるのも知りませんでした」
「火元となっても損害賠償を負うこともなく、住める場所がある。高齢者の一人暮らしなら、火災保険に入っていなくても、それはそれで何とかなるものだと思いました。とはいっても、やはり火災保険は必要ですよね?」
【お答え】火元の損害賠償責任がないということは、逆にもらい火の場合は賠償請求できません。火災保険の準備があれば安心です
「火災は精神的なショックも大きいので、ご家族の支えが大切ですね。地域によって異なりますが、補助金の支給や、仮住まいとして公営住宅等に優先的に安く入居できるようです。ご家族には、経済的な支援ができないか連絡がくると聞いたことがあります」
「火元となっても損害賠償責任は負わないというのは、『民法第709条 失火責任法』によるものです。『失火の場合は損害賠償しなくて良い。但し重大な過失の場合はその限りではない』という内容です。日本は木造住宅が隣接しており、類焼による損害が多大となることから、失火者を保護する目的で制定されたといわれています」
「重大な過失がある場合は、失火責任法による損害賠償責任を免れることはできません。また、保険会社から損害賠償請求(加害者への求償権)される可能性もありますのでご注意ください」
「逆に、隣家から火をもらってしまった場合には、賠償してもらえないことになりますね。自分で火災保険を準備していないと補償が受けられません。また、火災だけでなく、消火活動による水濡れ被害も補償の対象になります。水災や風災も心配ですね。やはり火災保険には加入しておかれたほうが安心ですね!」
「話は変わりますが、火災保険の請求サポート等のサイトや訪問に注意しましょう。悪徳業者の可能性があります。例えば、老朽化部分の修繕も含めて水増し請求する、雨どいを壊して自然災害と嘘をついて請求する等、不正請求に加担したとなれば、ブラックリスト入り、詐欺罪に問われることにもなりかねません。甘い言葉には、くれぐれもご注意くださいね」