パクチー嫌いも惚れ込む奇跡のパクチー〝岡山パクチー(岡パク)〟|からだに美味しいお取り寄せ(40)

出典:アーチファーム
薬膳において「パクチー」はストレス解消におすすめの食材。中医学においてストレスがたまった状態とは気の流れが滞っている「気滞」の状態と考えます。気の巡りは西洋医学でいう自律神経に重なり、そのコントロールがうまくいかずに精神不安定になったり、イライラしたり怒りっぽくなるのです。
パクチーは滞った気を流してリラックスさせる効果大。ストレスによる胃痛、食欲不振にも効果的です。また、食後のお腹の張りや胃もたれを改善する働きもあります。
好き嫌いが分かれる食材ではありますが、ぜひ注目していただきたいのが「岡山パクチー」。パクチー好きを魅了し、パクチーが苦手な人もファンになるという、唯一無二の「万人ウケ」を実現した「奇跡のパクチー」をご紹介します。
もくじ
香りも味もマイルド、甘みのある「岡山パクチー」
出典:筆者にて作成(豊かな土壌と水に恵まれた牟佐の地で、アーチファームは岡山パクチー、黄ニラを栽培しています)
岡山市北区の牟佐地区は緑の山々に抱かれ、一級河川・旭川が流れ肥沃な土壌が広がるエリアです。
出典:アーチファーム(自然豊かな牟佐地区。旭川にかかる「大原橋」は牟佐のランドマーク)
この地で、「岡山パクチー」(通称「岡パク」)の栽培を手掛けるのは農業法人「アーチファーム」の植田輝義さん。
出典:アーチファーム(「アーチファーム」の植田輝義さん。黄ニラとパクチーの栽培を手掛ける。黄色いつなぎは「黄ニラ大使」だから(詳しくは後述))
岡山で初めてパクチーの栽培をスタートした、「岡山パクチー生みの親」でもある植田さん。その魅力を多くの人に伝えるべく、自ら「岡パク大使」と名乗り、精力的なPR活動も行っています。
岡山パクチーの特徴は、なんといっても「食べやすい」こと。一般的なパクチーに比べて、香りと味がマイルド、食感もやわらかく、豊かな甘みがあります。
出典:アーチファーム(岡山パクチー。やわらかな葉、シュッとのびた茎、根っこも美しい)
パクチー特有の鮮烈な香りと風味が控えめなため、「パクチーが、これまで食べられなかった、という方も美味しい!とパクパク食べてくださいます」と植田さん。「なんといっても、パクチーが苦手だった僕が大好きなんですから」
えっ?
なんと植田さんはかつて「パクチーが大嫌い」だったのです。
パクチー栽培のきっかけは生産量日本一の「黄ニラ」
パクチー嫌いの植田さんがパクチーを育てることになった、そもそものきっかけは「黄ニラ」でした。
牟佐は「黄ニラ」の生産量が日本一を誇る一大産地でもあります。美しい黄色、青ニラとは違ってやわらかくて甘みがある高級食材として知られる黄ニラの栽培がはじまったのは明治5年ごろ。なんと140年もの歴史があるのです。
出典:アーチファーム(植田さんが育てた黄ニラ。光を遮って育てるため、ニラの持つ甘み、生でも食べられるほど繊維がやわらかい)
植田さんは兵庫県出身。奥さまの実家が牟佐地区で農家を営んでいたことから、黄ニラに出会いました。「妻の実家を訪れたときに食べた『黄ニラの味噌汁』が美味しくて感動したんです」という植田さん。その味わいにとことん惚れ込み、勤務していた鉄鋼会社を退社して、1999年に就農しました。
黄ニラの栽培はとても手間がかかります。青ニラを育て、さらに黒いビニールシートをかけて太陽の光を当てずに育てるため収穫までの月日は2年がかり!
出典:アーチファーム(黄ニラは、青ニラとして丈夫に育ててから、日差しを遮断して育て最後に天日干しして仕上げる)
シャキシャキとした歯ごたえと上品な甘みが魅力の、牟佐の黄ニラ。ところが、出荷の9割は東京。地元での知名度は極めて低かったのです。
植田さんは「地元の農業の活性化のためにも、もっと多くの人に知ってもらいたい」と栽培に加えて、自ら「黄ニラ大使」と名乗り、地元でのPRをスタート。黄色いつなぎを着て、眼鏡も靴もすべて黄色のアイテムで身を固め、試食イベントや収穫体験など精力的な活動を行い、次第に「岡山の黄ニラ」はメジャーに。いまでは、岡山での消費が各段に増え、飲食店の看板メニューにもなっています。
パクチー嫌いが目指した「日本一食べやすいパクチー」
黄ニラとともに、植田さんいわく「『ひそか』に栽培を続けていた」のがパクチーでした。
「2000年ごろ、黄ニラを出荷していた築地市場の方に、『中国野菜の仲間として、パクチーも作ってみたらどうか』と勧められました」と植田さん。
「当時、エスニック料理がブームになりはじめ、パクチーの需要が高まりはじめていたものの、日本で栽培を手掛ける農家があまりいなかったようです」。
早速、試験栽培を行い、育ったパクチーを食べてみた植田さん。その感想は「吐き出しました、こんなもの食べられない!って(苦笑)」。
「エスニックがブーム」になりはじめていたのは、あくまで「東京」の話。植田さんは、そもそも「パクチーを食べたことがなかった」のです。
強烈な香りと味、「正直、何もかも初めてのとんでもない風味」に、たじろいだ植田さん。「ニーズがあっても、自分が好きじゃないものを出荷することは、さすがにできない」と悩んでいたところ、「パクチーにはいくつかの種類がある、ということを教えてもらったんです」。
とりあえず、10種類のタネを取り寄せて栽培にチャレンジ。相変わらず「これ、ありえない!」「食べられない……」という品種ばかり。もうムリかと試した10種類目で奇跡が起きました。
「食べられたんです」と植田さん。「これなら大丈夫かも」と思った植田さんは、同じくパクチー嫌いの奥さまにも試してもらったところ、やはり「これなら大丈夫かも、と言われました(笑)」。
さらに、その日の夕食だった「豚の生姜焼き」にのせてみたところ、「食べられるかも、が『あれ、もしかして美味しい????』になったんです」と笑顔で当時をふりかえる植田さん。
唯一、食べられた品種の栽培をさっそくスタート。目指したのは「日本一食べやすいパクチー」です。とはいえ、当時、まだパクチーを栽培している人は少なく、情報があまりない状況のなか、「試行錯誤が続いた」と植田さんは語ります。
出典:筆者にて撮影(アーチファームのパクチー農園。およそ1ヘクタールの畑でパクチーを栽培している)
植田さんのこだわりは「パクチーの根っこ」をしっかり育てること。「栄養と水を十分に吸い込ませるためには、根を力強く育てることが大切です」。
土は近くにある牧場の堆肥をすきこみ、「中耕」といって栽培中にうね間や株間の土の表面を手鍬で浅く耕す作業を行い、「土をフカフカ」に保ちます。
出典:アーチファーム(みるからにフカフカに整えられた土で育つ岡山パクチー)
そして、十分な水やり。「パクチーは乾燥に弱い野菜。旭川の清らかな伏流水を切らすことなく、たっぷりと与えます」と植田さん。
その結果、目指すパクチーの味わいが完成。市場への出荷をスタートしました。
和洋中、スイーツまで万能な「ニュアンス」のあるパクチー
ところが「当初は、見向きもされませんでした」と植田さん。「マイルドで食べやすいパクチーは市場で求められていなかったんですよ」。
当時、ニーズがあったのはエスニック料理で使う香りが強く、いわば「鋭い味」のパクチー。つまるところ、植田さんが苦手なパクチーだったのです。
ところが次第に流れが変わります。植田さんが栽培したパクチーの「品質の高さ」が評価されはじめたのです。「パクチーは夏場に傷みやすい野菜。けれどうちのパクチーは耐久性が高い。しかも鮮度が維持されて、みずみずしさがキープされていることから市場で高い評価を得るようになりました」(植田さん)
それでもまだ世間のパクチーとのイメージの違いから、一般公開のタイミングを窺っていた植田さん。けれど2013年、そのときは訪れました。
「当時、黄ニラで商品開発を行ってくれていた地元の高校生たちに、『ほかに何か開発できる食材はありませんか』と尋ねられたんです。高校生たちのオーダーは断れません(笑)」と植田さん。
岡山パクチーの存在を地元で公表したところ、地元の飲食店から続々のオファー!地元のエスニック料理店からは「地元でパクチーが入手できる」と喜びの声。
それだけではありませんでした。岡山パクチーはエスニック系以外のお店でも堪能できます。
そのラインナップはお好み焼き屋さん、寿司店、フレッシュジュース、スイーツ店など。従来パクチーが存在するはずもないお店ばかりです。
出典:アーチファーム(岡山市「お好み焼き もり」の「パクチーお好み焼き」)
出典:アーチファーム(岡山市「スムージースタンド」の「岡パクスムージー」)
ちなみに先の高校生たちが開発したのは「岡山パクチーアイス」!
いずれの料理も大好評。そしてパクチーファンからも「美味しい」、パクチー嫌いには「初めて自分が食べられるパクチーに出会えた」と絶賛の声!
万人ウケばかりか、多彩な料理に万能という岡山パクチー。いったいなぜ、どうして?と探るべく、植田さんが丹精込めて育てた岡山パクチーをいただいてみました。
出典:筆者にて撮影(ふわふわと豊かな葉、これまで見たことのないほど、立派な真っ白の根っこ!)
葉を食べてみると、ふわりと空気をはらんでやわらか。かむと、まずフルーツのようなまろやかな甘みに驚きます。それもそのはず、岡山パクチーの糖度は一般的なパクチーのなんと、2倍もあるのです。
そして、パクチーならではの鮮やかな香気が、ふわっとひろがり、ほんのりと苦み。茎の部分のみずみずしいシャキシャキ感と、ほとばしるジューシーさも爽快!
岡山パクチーは、決してパクチーファンが好む「パクチー度」が、たんに軽減されたものではありません。パクチーを食べたときの「ニュアンス」が違う。やわらかい、ほんのり、ふんわり、まろやか。従来、パクチーの風味を表現するときにまず、使わないであろう言葉が並びます。
おだやかでやさしいからこそ、「パクチーの微妙なニュアンス」を感じる。だからこそ、これまでパクチーをあわせることがなかった料理に使っても、美味しくいただけるということ!
岡山パクチーがそもそもマイルドな品種だということもありますが、それだけではありません。じつは現在、岡山パクチーとして使われている種は、植田さんが栽培を確立したパクチーから自家採取したものです。
植田さんによれば、当初育てていたパクチーの味わいと、いまの味わいはかなり異なるのだそう。「甘みも格段に増していますし、美味しくなっていると思います」と植田さん。それは牟佐という土地あってこそ。そして手間暇かけて育てたからこその味わいなのです。
岡山パクチー、大ブレイク!!!タイ国営放送も取材に
次第に地元で、話題になりはじめた岡山パクチー。植田さんは「黄ニラ大使」に続いて「岡パク大使」にも「自ら」就任。県内外での積極的なPR活動をスタート。飲食店とのコラボやレシピ開発にも、熱心に取り組みました。
そのころにはパクチーも全国区になり、パクチーを熱愛する「パクチスト」も増加。そして一大「パクチーブーム」が到来したのです。
2016年、ぐるなび総研は「今年の一皿」として「パクチー料理」を選出。授賞式で並んだのはなんと、岡山パクチー!
これを機に、岡山パクチーは大ブレイク。押しも押されぬ「岡山の野菜」としてのイメージが定着。引き合いも増え、植田さんもメディアに引っ張りだこに。そして岡山パクチーを栽培する農家も増えました。
さらには、なんとパクチーの本場・タイの国営放送が植田さんのもとへ取材に!
「記者の方は、美味しいとおっしゃってくださいました。そして、これだったら『パクチーが苦手だというタイ人も食べられるだろう』って」と植田さんが笑顔で語ります。
東南アジアの風香る「しっかりパクチー」にはない、おだやかな表情をもつ岡山パクチーは、きっと日本ならではのパクチー。いわば、世界に通用する「和パク」。そう呼びたい気持ちになりました。
パスタ、そば、お寿司……汎用性が高すぎるパクチー! 根っこも絶品
植田さんに岡山パクチーのおすすめの食べ方を教えてもらいました。
まずはそのままサラダ。「ごま風味ドレッシングをかけて、お好みのナッツを散らしたサラダにすると、モリモリパクチーがいただけますよ」。
またエスニック、中華全般はさることながら特筆すべきは「洋風レシピ」にもぴったりだそう。植田さんが「オリーブオイルとの相性がよいのでパスタ、ピザに使っても美味しいです」と説明する。
さらにパクチーがもっとも合わなさそうな「和食に」もおすすめ。「だしまき卵や鍋ものに。酢飯との相性もよいのでお寿司にもバッチリですよ」と植田さん。そして、最初に植田さんがパクチーを「美味しい」と思った、生姜焼きもおすすめだそう。
そして忘れてはならないのは見事な「根っこ」。そのままかじってもやわらかくて甘みがあります。例えるなら、パクチーの風味がほんのりした「新ごぼう」のよう。
出典:筆者にて撮影(純白の美しい根っこ)
「ここは絶対に味わっていただきたいです」と植田さん。「素揚げにするととっても美味しいですよ」。
出典:アーチファーム(植田さんお気に入りの「岡山パクチー根っこの素揚げ」)
和洋中万能な岡山パクチーで、薬膳レシピを作ってみました。
まず、「岡山パクチーのストレス解消フルーツサラダ」。気を巡らせる働きの高いオレンジと組み合わせて、ヨーグルトであえて仕上げます。糖度の高い岡山パクチーはフルーツと最高の相性。シャキシャキ食感と華やかな風味がスパイスのように味に彩りをそえます。
出典:筆者にて撮影(岡山パクチーのストレス解消フルーツサラダ。バナナ、メロンもプラス。ヨーグルトにもマッチ)
つづいて、「岡山パクチーとカキのスクランブルエッグ」。中医学で、ストレスと関係の深い臓器「肝」を強化するカキとパクチーを組み合わせるとさらに、効果がアップします。
カキのうまみ、卵のやさしさ、やわらかなパクチーの風味で「おっとり癒し系」の味わい。
出典:筆者にて撮影(岡山パクチーとカキのスクランブルエッグ。オリーブオイルでカキを炒め、ザク切りにしたパクチーを加え、塩・こしょうをふった溶き卵をプラスして全体を混ぜる。最後に「追いパクチー」で)
おすすめの食べ方はシンプルに塩味で作っておいてしょうゆや、ケチャップ、マヨネーズ、ソースなどお好みの調味料で食べること。岡山パクチーはどんな調味料でも合うことが実感できるはず。とくに、ソースがぴたっとハマるのは驚き!
出典:筆者にて撮影(カキフライに添えるのもおすすめ。ソースとの相性がバツグンによいので、とんかつなど揚げ物のおともにもぴったり!パクチーのさわやかさで、スッキリ美味しくいただけるうえに、胃もたれなし!)
和風アレンジにもトライしました。「岡山パクチーのリラックスあさりそば」。リラックス効果のあるそばと、肝の働きを高めるあさりを使用。
ふつうはパクチー×そばの場合、タレにゴマ油をプラスしたりすることが多いのですが、岡山パクチーはオリーブ油をプラス、がおすすめ。岡山パクチーならではのやさしさが引き立ち、そばともしっくりなじみます。
出典:筆者にて撮影(岡山パクチーのリラックスあさりそば。あさり缶を使って手軽に作れます。ゆでてしめたそばに、あさりの身、パクチーをのせ、めんつゆ・缶汁・オリーブオイル、にんにくすりおろし少々を混ぜたタレをかけて)
もちろん根っこも忘れてはいけません。少しごぼうに似た感じのある、パクチーの根。マヨネーズを使った「パクチーの根っこエスニックマヨサラダ」にしてみました。
ゆでたパクチーの根とザク切りにした葉を、ナンプラー、レモン汁少々を足したエスニックマヨであえ、肝の働きをサポートするクコをちらします。根の甘みと、華やかな風味が引き立つ、これまでにない味わいのサラダに。
出典:筆者にて撮影(パクチーの根っこエスニックマヨサラダ。見事な岡山パクチーの根っこだからこそできるサラダは、おそらく未体験の味わい。「いったいこれなに!?」と驚かれること間違いなし)
そして、植田さんがいうとおり、揚げてもバツグンの美味しさ。「薬膳岡山パクチーかきあげそば」もおすすめです。
出典:筆者にて撮影(パクチーの根とねぎをあわせてかきあげに。たっぷりの葉とともにそばにのせれば、ストレスも吹き飛ぶ「薬膳パクそば」に!)
さまざまな表情のある岡山パクチーは、「パクチーを料理する楽しみ」にも満ち溢れています。
植田さんによれば「パクチーを使うなら、岡山パクチーでないとダメ」というお店も多いのだそう。
「パクチーにもいろんな種類がある。まずはそれを多くの方に知っていただきたいですね」と植田さんは語ります。
ぜひ、岡山パクチーで新たな、楽しく美味しい「パクチーライフ」の扉を開いてみませんか?
■「岡山パクチー」は、アーチファーム公式サイト内のオンラインストアからお取り寄せください。もちろん、「黄ニラ」もお取り寄せできます。