富山県南砺市よね田の〝かぶら寿し〟白かぶとブリ、糀が醸す冬の宝物|からだに美味しいお取り寄せ(35)
出典:よね田
冬を迎え、一段と甘みを増す「かぶ」。薬膳においては、ストレス解消に役立つ食材です。また、消化不良や胃のもたれ、胸やけにもよく暴飲暴食になりやすい年末年始におすすめの野菜でもあります。
今回は富山県の絶品「かぶグルメ」をご紹介します。
富山の冬に欠かせない「かぶら寿し」
出典:筆者にて作成(冬本番を迎えた富山県南砺市にて、「よね田」のかぶら寿しも出荷の繁忙期を迎えています)
富山の冬を代表する郷土料理「かぶら寿し」。寿司といってもかぶにブリなどの魚をはさんで発酵させた「なれ寿司」の一種です。とくに、豪雪地帯である富山県西部~能登地方および金沢で、冬を乗り切る越冬食として江戸時代のころから作り続けられてきた歴史があります。
石川県ではおもに水気の少ない青かぶを使って作られますが、富山では、みずみずしさのある大白かぶが使われるという特徴があります。
かぶら寿しは、かつてはお正月のハレの料理として、各家庭で作られていたそうです。年々、自宅で作る人は減っているものの、冬になると好みの銘柄を購入して味わったり、贈答品にするなど愛されてやまない存在です。
かぶら寿し作りは、5月からスタート
南砺市「よね田」も、多くの根強いファンをもつかぶら寿しの名店。「かぶら寿しは、富山の豊かな自然と実り、気候が育んだ郷土食です」と語るのは、三代目である米田祥和さん。社長である父の数彦さんとともに、地域の宝ともいえる、かぶら寿し作りに真摯に取り組んでいます。
出典:よね田(よね田の3代目であり、開発部長兼営業部長の米田祥和さん)
かぶら寿しの製造がスタートするのは、かぶが旬を迎える10月ごろからですが、よね田の場合は、なんと「5月ごろ」から始まります。
それは、かぶら寿しの主役ともいえる「かぶ」の栽培から目を配っているからです。
よね田のかぶら寿しに使うかぶは、基本的に自社契約農家が「かぶら寿し専用」に栽培したもの。品種は、聖護院系早生白かぶ。天候や土質で生育が変わるため、栽培に手間がかかりますが、よね田のかぶら寿しには欠かせないもの。
出典:よね田(かぶら寿しに使用する白かぶ。白かぶの生育に適した、南砺市福光地区で栽培)
「美味しいかぶら寿しに仕上げるためには、肉質、甘み、歯ごたえを満たした、かぶが必要です。この品種はそれを満たしています」と米田さん。
そして、品種だけの問題ではありません。漬け込んでもかぶがぐったりせず、しっかりと甘みがする味わいに仕上げるにはかぶがどんな土で育ち、肥料は何を与え、水はどの程度必要なのか。それを農家とともに行っているのです。
出典:よね田(白かぶの畑。米田さん自身の目で、生育状況を確かめながら、農家とともに栽培)
「農家の方と試行錯誤して、わたしたちの目指す味わいのかぶら寿しを実現するかぶを作り上げました。土作り、種まき、肥料、収穫まで、わたしたちも、ともにかぶを見守り続けます」と米田さんが説明する。
出典:よね田(白かぶは旬を迎えた10月以降、身が引き締まり甘みを増したころに収穫)
目指すのは「柿のような甘みがあり、歯ざわりのよいかぶ」。「どんな状態で栽培されたわからないかぶでは、わたしたちのかぶら寿しはできません」と米田さんはきっぱり語ります。「自分の目で確かめたものしか使わない」という強い意志があるのです。
かぶに合わせるブリは、お刺身でもいただけるほど、鮮度バツグン、脂がのった日本海天然ものを吟味して使っています。もともと、よね田は魚屋として創業。「魚の目利きには自信があります」と米田さん。
出典:よね田(産卵に向けて栄養をたくわえ、濃厚な旨みのある「寒ぶり」を使用)
出典:よね田(よね田のかぶら寿しの中でもとくにブリにこだわった「米彦」は、ブリを最大限分厚く切って挟んでいる。この厚みはブリの質の良さあってこそ)
麹は、南砺市「石黒種麹店」の麹を仕入れています。石黒種麹店は北陸で唯一、そして全国でも十数軒しかないという「種麹店」。富山県産コシヒカリの一等米を使い、昔ながらの手作業による「こうじ蓋製法」でていねいに仕込んだ麹を選んでいます。「製造のたびに、仕入れています。新鮮で発酵力が高い麹で、甘みのあるかぶら寿しに仕上がります」。
出典:よね田(かぶら寿しに使用する麹。よね田のかぶら寿しのスタンダード「福丸」は、米で仕込んだたっぷりの糀甘酒を使用)
とことんこだわった原料を用いて、いよいよかぶら寿しの仕込みにかかります。
すべて、作業は手作業。「ひとつひとつの行程を目で確認して、肌で感じることが重要です」と米田さんが説明してくれます。白かぶのコンディションによって、熟成温度や時間も調整する必要があるからです。
また、「小ロットで作る」ことも遵守しています。「大きな桶でひとまとめに作れば効率的かもしれませんが、桶の大きさは発酵の加減に大きく影響します。味を均一にするためには重要なことなのです」。
まず、作業は白かぶの皮を削ることから。メロンひと玉分ほどもある、まるまるとした白かぶを惜しげもなく、中心部まで削りこみます。「もっとも甘みがある中心部だけを使います。日本酒でいえば大吟醸の精米のように削り取りますね」と米田さん。
続いて塩で3日ほど、下漬けします。「かぶをふっくらとやわらかくさせるためです」と、米田さん。
ブリは鮮度を維持するためにスピーディーにさばき、下漬けしたかぶにはさみこみます。
出典:よね田(白かぶにブリをはさみこむ。鮮度のよさを物語るブリの美しさ!)
そして本漬け。ブリを挟んだ白かぶを樽に入れてたっぷりの糀甘酒を加え、2週間~1か月ほど漬け込みます。
出典:よね田(ブリをはさんだ白かぶに糀甘酒、ニンジンを交互に重ね、重石をして熟成庫で休ませる)
かぶと糀の乳酸発酵、ブリのたんぱく質と脂肪を分解して生まれる旨み。熟成によって里と海の幸の「絶妙な調和」を醸す……。
そのためには、ただかぶを切って、ブリをはさんで漬け込むだけではない、長く、きめ細やかな作業が行われているのです。
ひたすらに「やわらかな」三位一体。時間の経過ごとに変わる味わいも楽しめる
よね田ではさまざまな種類のかぶら寿しを販売しています。定番は、輪切りにしたタイプの「福丸」です。
出典:よね田(よね田の定番「福丸」。多彩なラインナップが揃っているが、まずはこちらをぜひ)
米田さんが、かぶら寿し初心者向けに、食べ方をアドバイスしてくれました。
「一般的なお寿司を想像されていた方は、『このドロドロは、どう食べたらいいのか』と思われることもあるようですが(笑)、洗う必要はありません。食べやすい大きさに切り分けて、糀ごとそのまま召し上がってください」と米田さん。
出典:よね田(福丸。糀をまとった「小さなケーキ」のよう)
福丸を食べやすくひと口サイズに切った「ひとくちさん」も好評。こちらをいただいてみました。
出典:筆者にて撮影(福丸を、食べやすくカットした「ひとくちさん」)
糀はふわっといい香り。白かぶを食べてみると「さくっ、ジュワッ」。えっ! カリッとでも、シャキッとでもなく「さくっ」。想像しなかったしなやかな歯ごたえです。そして驚くほどみずみずしく、ジューシー! こんな食感の、かぶ料理は人生初! そして、うっとりするほどやわらかな甘みが口の中に広がります。
出典:筆者にて撮影(ひとくちさん。かぶやブリの旨みを吸い取った糀も絶品。お皿をぬぐいたいほど!)
かぶの酢漬けや浅漬けのような、シャキシャキした食感、スッキリした風味とはまったく別もの!
そして、まるで生ハムのようなしっとりしたブリも、やわらかな旨み。ブリといえば思い浮かぶ「パンチのある味わい」とはまったく異なります。糀もやわらかな、まろやかさ。
ひたすらにやわらかい。そんな「やわらかな三位一体」はまるで、ひらひらと舞う「ぼたん雪」のような、やさしさ。食べたあとに、しん、と静寂が訪れるようなおだやかな「冬の宝物」のような一品です。
そして、この味わいは時間が経過するにつれて「変化する」のも、かぶら寿しならではの醍醐味です。
「最初は甘みが強く、次第に旨みと酸味に変化していきます。発酵による『味の移り変わり』もぜひ楽しんでいただきたいですね」と米田さんが説明してくれます。
賞味期限は12日間。毎日毎日、微妙に味わいは変化します。5日目にいただくと、じっくりした旨みが深まり芳醇な味わい。10日目にいただくと麹特有のまろやかな酸味が、ふわっと広がります。ヨーグルトのような味わいをまとって、ワインにもぴったり。
さらにかぶら寿しは「旬による移り変わり」も楽しめます。使うかぶの「時期」の味わいが反映されるのです。
「旬も原料の一部です。11月初旬の『はしり』は軽やかな美味しさ、12月がもっともバランスのよい味わい、1月中旬以降の『なごり』は熟成した風味をお楽しみいただけます」と米田さん。
富山の自然と真心こめた手仕事が育んだ、かぶら寿し。届いてからも「育つ」、里と海の恵みの息遣いを感じるような逸品グルメ、ぜひお試しを。
■よね田の「かぶら寿し」は、よね田公式サイト(https://www.kabu-yoneda.jp/)からお取り寄せください。
※「ひとくちさん」は、富山県アンテナショップ「日本橋とやま館」でも販売しています。