お買物探偵団

尾鷲市大瀬勇商店〝かつおの生節〟100年超の伝統の技で仕上げた逸品|からだに美味しいお取り寄せ(32)

出典:大瀬勇商店

 

今回は、三重県尾鷲市から絶品「かつおの生節」をご紹介します。

 

薬膳において、パワフルな効能をもつかつお。その最大の薬効は造血作用です。

 

中医学では、「血虚」と呼ばれる血が不足した状態になると、立ちくらみを起こしやすくなると考えます。全身に流れて、体のすみずみにまで栄養を与える液体である「血」が足りないために、体が「栄養不足」の状態に陥っているのです。

 

栄養不足は立ちくらみだけではなく、手足のしびれ、こむら返りといったトラブルにもつながります。そのほか、血は目を滋養するとされているため、視力低下、疲れ目、目のかすみの原因に。また、動悸、息切れ、不整脈といった心臓疾患も起こしやすくなります。

 

そして困ったことに血が足りなくなると、脳にも栄養が行き届かず、物忘れが激しいなどの症状も現れがちになり、認知症の引き金にもなるのです。生涯現役を目指すなら、しっかりと血を補うことが重要なのです。

 

かつおは、血を増やす効果が高く、人間のエネルギー源である気をチャージする作用もあるので、滋養強壮にもおすすめ。胃のコンディションを整えて消化を促す働きもあります。

 

かつおはさまざまな加工品がありますが、今回取り上げるのは「かつおの生節」(なまり節)。生節というと「味がなくてたんぱく」というイメージの人もいるかもしれませんが、とんでもない! ご紹介するのは「味も香りも脂もある」絶品です。かつおの生節概念が変わるはず。

 

創業時から変わらぬ工程、同じ道具で造り上げる「かつおの生節」

 

出典:筆者にて作成(大瀬勇商店は、尾鷲市で100年を超える伝統を持つ海産物店。かつおの生節が大人気です)

 

三重県南部に位置する尾鷲市。山々を背にして熊野灘に面した町は、深く入り組んだリアス式海岸、沿岸の山々から降り注いだ雨が流れこみ、昔から天然の良港として知られています。年間通して、さまざまな美味しい魚が水揚げされていますが、とくに、かつおは地元では身近な魚です。熊野灘は沖合を流れる黒潮の影響を受け、かつおの好漁場。身が引き締まり、ほどよい脂のりが魅力です。

 

そんな絶品のかつおを使った尾鷲の伝統食が「かつおの生節」。かつおをゆでて1回燻したいわば、「半生状態のかつお節」です。

 

出典:筆者にて撮影(尾鷲市大瀬勇商店の「かつおの生節」)

 

「このあたりでは、昔からいたみやすいかつおを保存するために、生節が造られてきました」と説明するのは、尾鷲港のほど近くに位置する海産物店「大瀬勇商店」の四代目社長である大瀬勇人さん。

 

大瀬勇商店は明治35年創業。尾鷲港で水揚げされた魚を使ったさまざまな加工品を手がけ、いまもなお伝統的な方法でかつお生節を製造。地元のみならず、全国に多くのファンを持つ逸品として知られています。

 

尾鷲にはかつて、数多くのかつお生節製造店があったものの、水揚げの低下や後継者不足で、いまでは2軒のみ。尾鷲ならではの伝統の味を守りたいと、大瀬さんは、甥である邦裕さんと昔ながらの方法で生節造りを続けています。

 

出典:大瀬勇商店(大瀬勇商店四代目の大瀬勇人さん(左)と、甥で五代目を継承する大瀬邦裕さん。創業時より変わらぬ工程でかつお生節を造り続ける)

 

製造は、すべて手作業。なおかつ、その工程は、創業時から変わることなくまったくそのまま。使う道具ですら、当時から使い込まれたものです。その手間は想像をはるかに上回るものです。

 

かつお生節の製造は、厳選した地元・尾鷲または国産のかつおをさばくことから始まります。頭を落とし、腹を切り、背びれ、尻びれを取り、三枚におろします。

 

かつおの生節の製造工程は、基本的に「燻しが1回」であることを除いては、かつお節と同じです。縁起物でもあるかつお節は、「見た目の美しさ」も大切。生節であっても、それは変わることなく大瀬さんは「生節の形」も大切にしています。「カツオの頭から3本目の骨に包丁を入れて落とす、腹は丸く切り取ると形が決まる。祖父に教わったことを引き継いでいます」。

 

出典:大瀬勇商店(かつおを効率よく、美しくさばく。素人には考えられないほど軽々と作業を行う)

 

とはいえ、もたもたしているわけにはいきません。1150匹以上さばく日もあります。創業当時から使われている年季の入った包丁は何種類もあり、それぞれ効率よく、美しくさばけるように調整されたもの。工程ごとに使い分けて、スピーディにおろしていきます。

 

出典:大瀬勇商店(工程によって包丁は使い分ける。右から「頭落とし」「背突き」「3枚おろし」「5枚おろし」「整形」用の包丁)

 

続いて「煮熟(しゃじゅく)」。まず、煮かごに「ウラジロ」とよばれるシダの一種をていねいに敷き詰めて、かつおを並べます。「このあたりでは昔から生節造りに使われてきました。ゆでたときにかつおが、かごに付着するのを防ぐ役割があるんです」と大瀬さん。お正月飾りにも使われるウラジロは、裏山で自ら採ってきたもの。尾鷲の「山の恵み」がいかされています。

 

そして、もうひとつ、煮かごにともに並べられる山の恵みが「天台烏薬(うやく)」。「烏薬」の名でその根が、生薬としても使われています。胃の働きを調えたり、気の巡りをよくしてストレス解消にも役立つ生薬の枝葉が使われていることに驚きました。

 

出典:大瀬勇商店(煮かごにウラジロを敷いてかつおをのせ、天台烏薬を置く)

 

出典:大瀬勇商店(天台烏薬。実が熟すと「烏(からす)」のように、真っ黒になることから名づけられたといわれている)

 

これも、大瀬さんが裏山から採ってきたものです。このあたりは、「徐福伝説」の地。秦の始皇帝の方士であった徐福が、その命を受けて不老不死の仙薬を探すために、大航海の末たどり着いたのが、尾鷲に隣接する熊野。この地で、天台烏薬を発見したといわれています。

 

「かつおのアクをとる働きがあるんです」と大瀬さん。天台烏薬をかつおの生節に使うのは、大瀬勇商店ならではのオリジナルだそうです。

 

煮かごは井戸水を沸かした煮窯に沈めて、1時間40分ほどゆでます。温度が低すぎれば生煮え、高ければゆですぎて固くなり、旨みがなくなります。水をさして適温を維持。もちろんその日のかつおのコンディションを見極めて調整する必要があります。

 

ゆで上がったら「水越し」とよばれる工程へ。かつおを水にさらし、ウロコがある頭側の皮をとり、細かい腹骨をピンセットとナイフを使い、水で洗いながら11本取り除きます。かつお節でも行われる工程ではありますが、そのまま食べる生節にとってはとくに重要な作業です。ゆでたかつおが身崩れしないように、水の上に浮かせるようにしてていねいに行う、根気のいる作業です。

 

出典:大瀬勇商店(かつおの皮や骨を取り除く「水越し」。かつおがその重みで水に沈むと身が割れてしまうため、浮力をいかして作業する)

 

続いて「焙乾」を行います。昔ながらの「手火山式焙乾方法」で、かつおをじっくり強い火力で燻して乾かします。かまどに尾鷲産の桜やウメバガシの薪をくべて火を起こし、10枚ほどかつおを並べたせいろを重ねてのせます。高温で燻すことで、かつおの香りと旨みを十分に引き出すことができるのです。

 

出典:大瀬勇商店(手火山式焙乾方法でかつおを燻す。重ねたせいろの上下を何度も入れ替えて、燻し具合を調整する。せいろも創業時から使い続けているもの)

 

ただし火が強く、つねにかつおの状態を確認していないと焦げてしまうので手間がかかるうえに、高度な技術が必要なため、いまではあまり行われていない方法です。

 

出典:大瀬勇商店(手火山式焙乾方法はもっとも原始的な焙乾方法。他の方法に比べ圧倒的に火力が強いため、職人の技が必要)

 

燻し時間は約3時間。燻し具合を一定にしながら、しっかりきつね色の焦げ目がつき、なおかつ、ほどよいやわらかさに仕上げます。この見極めはまさに長年の経験による「匠の技」です。

 

出典:大瀬勇商店(こんがり燻して、美しいきつね色に仕上げる)

 

最後に、背皮の節と腹側の節の間にある血合い骨を除いて、最終的に問題がないか確認して、完成。

 

出典:大瀬勇商店(燻し終えたかつおはさらに骨を除き、形を整える)

 

完成するまでにおよそ、2日がかり。それでも昔ながらの方法にこだわる大瀬さん。「合理化する方法が見当たらないんです」とポツリ。「たとえば骨を抜く作業は、機械化が難しい。手間を省くなら、骨付きのまま商品にするしかありません。でも、食べにくいよね」。

 

「わたしは父から、こう教わりました」と大瀬さんは続けます。

 

「なるべくいいものを作ろうと思うなら、ひと手間かけろ。もっといいものを作ろうと思うなら、ひと手間かけろ」

 

大瀬さんが「何度も手間をかけた生節」は、地元で愛されてやまない存在。

 

「生節は、出来立てがとても美味しいんです」と大瀬さん。ホカホカの味わいを楽しみに、地元の人々はタイミングを見計らって製造所にやってくるのだそうです。

 

尾鷲の海と山の宝を、ひとの手でていねいに育んだ「変わらない味」。大瀬さんの揺るがない信条のもとに完成したかつおの生節はきっと、多くの人々に美味しさとともに「ずっと同じ」という「普遍的な幸せ」も届けているように思えました。

 

生のかつおと、かつお節の「いいとこどり」。多彩なアレンジで楽しめる

 

大瀬勇商店の生節は、見た目も堂々とした存在感。

 

出典:筆者にて撮影(かつおの生節の見事なふっくら、美しいフォルムにうっとり)

 

むっちりと膨らみ、こんがりとした焼き目。身を割ると、中はほんのり紅を指したようななんとも美しい桜色。外から想像がつかない優美な色合いです。

 

出典:筆者にて撮影(割ってみると、中は桜色。まるで生ハムのよう)

 

「まずはそのまま味わっていただきたい」という大瀬さん。食べてみると、しっとりした食感。かみしめるうちにかぐわしいスモーキーな風味ののちに、豊かなカツオの旨み、まろやかな脂もじんわりと広がっていきます。

 

塩などの味付けはいっさいないのに、じつにふくよかで、華やかな味わい。そして、全身の細胞に命が伝わるよう。なんとも、躍動感がある美味しさに驚きます。そして食べるうちに、どんどん元気になる! そんなエネルギーに満ち溢れています。

 

出典:筆者にて撮影(そのままでも、止まらなくなる美味しさ。血合いを食べるうち元気になってくるのは「天台烏薬」のパワーもあるのかも!?)

 

おすすめの食べ方は、生姜醤油で食べること。そのままおつまみに、あるいはごはんにのせる、が地元の定番だそうです。

 

確かに、醤油がしみ込み、しょうがの爽快な風味が加わってお酒も進めば、ごはんも進む! 全体をよくなじませて食べるとまたまた、ごはんに生節の香ばしさとだし、マイルドな脂が浸み込んで止まらなくなります。お茶漬けにしても、旨みが炸裂!

 

出典:筆者にて撮影(生姜醤油で食べるとごはんが無限に! ぽん酢をかけても美味しい)

 

いわば、かつおの生節は、生のかつおと、かつお節の「いいとこどり」の味わいが楽しめるのです。

 

夏場、地元ではヤツガシラの茎の部分を赤紫蘇でつけた「くき漬け」というお漬物と一緒に生姜醤油で食べることが多いのだとか。お漬物と合わせるのがおすすめとのことだったので、しば漬けと合わせてみました。カリカリした食感と酸味が加わって美味しくいただけます。

 

出典:筆者にて撮影(しば漬けとともに。高菜と合わせても美味しい)

 

「マヨネーズをつけても美味しいので、サラダにも合います。チーズトーストにしても美味しいですし、洋風に食べても美味しいです」と大瀬さん。大瀬家ではみそ汁の具にしたり、カレーに入れることもあるそうです。「ツナのイメージで使っていただきたいですね」。

 

確かに、スモーキーなツナ、と考えると多彩なアレンジができそう。

 

「かつおの生節」薬膳を作ってみました。まず、「かつおの生節キャロットラペ」。ピーラーで薄くそいだニンジン、ほぐしたかつおの生節、レーズンを、オリーブオイル、赤ワインビネガー、粒マスタード、塩を混ぜたドレッシングであえます。

 

かつおの生節は、オリーブオイルとぴったりの相性。かつおの旨みが加わってにんじんも甘みが引き立ち、ワンランク上のキャロットラペに。白ワインが進む味わいに仕上がりました

 

出典:筆者にて撮影(かつおの生節キャロットラペ。同じく血を補う作用のあるにんじん、レーズンを組み合わせた「造血キャロットラペ」)

 

もうひと品は、しっかりした旨みとコクをいかして「かつおの生節薬膳黒担々麺」に。ほぐした生節、ねぎ、にんにく、しょうが、ザーサイを炒めて、黒ねりごま・黒すりごま、味噌、しょうゆ、鶏がらスープの素を合わせたスープを加えて仕上げました。

 

かつおの生節の食感は、加熱してもしっかり残り、濃い旨みがあるので肉に負けないパンチがあります。しかも、うれしいことにだしが出るのでスープも格別な美味しさ。黒ゴマのコクが加わって大満足の担々麺が完成しました。

 

出典:筆者にて撮影(かつおの生節薬膳黒担々麺。こちらも造血作用のある黒ごま、小松菜、クコの実を組み合わせたレシピ。歯ごたえがあり、香ばしい風味の、かつおの生節だからこそできるレシピ。ツナ缶では再現できない美味しさ)

 

使い方は多彩。そして、料理の味わいが各段にランクアップします。そのうえ、食べるほどに身体に力がみなぎる。「生命力あふれるかつおの生節」で、美味しくパワーアップを。

 

 

■「かつおの生節」は、大瀬勇商店公式サイトにてお取り寄せください。

 

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