50代。年金の繰上げ受給する?しない? |老後のマネー安心に(12)

出典:編集部にて作成
シニア世代の大きな悩みごとのひとつが「老後のお金」に関するあれこれです。
毎日のように、ファイナンシャルプランナー佐々木先生のもとには、老後のお金まわりの相談が寄せられています。その中から、みなさまにもきっと役立つ相談案件をこちらでご紹介します。金融の知識は〝0〟で大丈夫! 気軽に、一緒に勉強して、老後の安心づくりを進めましょう。
【今回のご相談】年金の繰上げ受給を考えていますが、正解なのかどうか迷ってしまいます……
■年代:50代 ■性別:女性 ■相談カテゴリ:老後のマネー
───今回ご紹介するのは、60歳で年金の繰上げ受給を考えているが、65歳受給や繰下げ受給もあって、どれが正解なのか迷ってしまうというご相談です。
「今年、60歳の誕生日を迎えます。60歳になったら、のんびり過ごしたいと思っていましたが……、いざ先が見えてきたら、やりたいことが沢山あるという思いの方が強くなってきました」
「テレビの街角インタビューで、『何歳のころが一番良かったですか?』と、80代の女性に質問していました。その答えが、なんと60代だったのです。理由は、夫や子供から完全に手が離れ、本当の自由になれた時だったと。そして70代になってしまうと体が利かなくなってくるというのです」
「60代なんて嫌だな~と思っていましたが、そのインタビューを見たとき、60代って楽しめるラストの時なのかもと思い、もっと前向きな60代にしようと思いました!最近増えているという年金の繰上げ受給を考えています」
「仕事を続けて給与に年金がプラスされれば、60代の生活イメージががらりと変わります。ですが、よく耳にするのは、給与が高めだと年金が減らされるという話。また、減額されてしまうのも損をしてしまうようで迷います。繰上げ・65歳受給・繰下げ、何が正解なのでしょうか?」
【お答え】どの受給方法を選択するかは人それぞれですが注意点は必ず確認しましょう
「繰上げ受給(60歳~64歳で受給開始)を検討される場合、『日本年金機構の繰上げ請求の注意点』を必ず確認してください。知らずに繰上げ受給をしてしまうと損をしてしまうことになるケースもあるからです」
「主な注意点は『年金額が減額される』『国民年金の任意加入や保険料の追納はできない』『障害年金を受け取れなくなる』『雇用保険や高年齢雇用継続給付が支給される場合は、老齢厚生年金が一部または全額支給停止となる(65歳まで)』『遺族厚生年金と併せた受給はできない(65歳まで)』『在職老齢年金制度(月収と年金の合計が50万円(2025年1月時点)を超えると厚生年金の一部がカットされる)』などです」
「繰上げ受給しない方がいい人は『国民年金の未納期間がある人』『治療中の病気や持病がある人(老齢年金<障害年金(非課税))』『失業保険を受給したい人』などになるかと思います」
「60歳以降、仕事を続けながら年金を受給してしまうと、一定額を超えた場合に年金全部がもらえなくなると思っている人が多いようですが、それは間違いです。『在職老齢年金』で支給停止の対象になるのは『老齢厚生年金』で『老齢基礎年金』は減額されません。ねんきんネットのリンクで、繰上げ受給後の金額などを自動で計算できます」
「繰上げ受給している人の中には、損得より、健康なうちに充実した生活を送りたいという人生観をお持ちの人もいるようです。健康に過ごせる時間は有限ですから、増額される繰下げ受給が必ず得になるとも言えませんね」
「受給開始年齢が引き上げられるかも?納付期間が延長されるかも?コロコロ変わる年金制度の不安定さから繰上げ受給を考える人もいるでしょう。年金の受け取り方に正解はなく、人それぞれの考え方・人生観ということになりますね。今できることをしたい人にとっては、繰上げ受給は味方になりそうですね」