真鶴町「魚伝」。伝統と革新の絶品アジの干物。旨味がすごい|からだに美味しいお取り寄せ(42)

出典:魚伝
初夏に旬を迎えるアジ。血流をアップして、全身に行き渡らせる優れた効能があります。血管を強くして、動脈硬化や高血圧の対策にも役立ちます。
また、胃の働きを強めて消化機能をアップするので、食欲不振の改善にもよい食材。さらに、中医学において「健脳」という効能があり、認知症予防、脳力アップにもパワー大。
アジは焼いたり、フライにしても美味しいけれど、その旨みを余すことなくいただくなら「干物」もおすすめ!今回は、一度食べたら虜になる、絶品のアジの干物をご紹介します。
もくじ
吟味した魚、徹底した「洗い」と絶妙な「干し加減」で完成する極上の干物
出典:筆者にて作成(干物の名店「魚伝」は、伊豆半島の神奈川側付け根の港町、真鶴町に店を構えています)
神奈川県南東部に位置する真鶴町。豊かな海の幸が水揚げされる真鶴漁港の近くにたたずむ「魚伝」は明治10年(1877年)創業の干物店です。
出典:魚伝(真鶴漁港のほど近くに位置する「魚伝」。趣のある建て構えの店舗)
代々受け継がれた製法にこだわった干物の数々は、東京をはじめ日本各地のデパートの催事でも大人気。全国に多くファンを持つ銘品を送りだしています。
「初代は漁師、二代目は仲買人。三代目から干物を作り始めました」と語るのは五代目の青木良磨さん。四代目の父・良修さんとともに、ていねいに一枚一枚手作業で干物づくりを行っています。
出典:魚伝(青木良磨さんは家業を継いで17年。41歳の五代目。真鶴の地域活性化にも意欲を燃やす)
魚伝の干物の大きな特徴は「クセがなく」「身がフカフカ」。その秘密は徹底したこだわりの製法にあります。
出典:魚伝(魚伝自慢の干物。キンメダイ、サバ、アジ、カマス、イボダイなど)
魚伝の干物づくりは、まず原料となる魚選びからはじまります。代々豊かな海の幸を知り尽くした目利きで魚を厳選。包丁を入れて内臓を取り除き、その後は、一匹一匹、ブラシを使って徹底的に洗います。この「洗い」が大きな味の決め手になるのです。
「余分な血のりなどは臭みの原因になるんです」と良磨さん。骨身にフィットして、しっかりとすみずみまで洗えるように、魚種ごとに形状や柄の長さが違うブラシを使い分けるというほどの徹底ぶり。ただし、ただ「洗えばいい」というものではありません。「おなかのあたりの脂は残すように注意しながら、洗います」と良磨さんが説明します。
出典:魚伝(ホースで水をかけて終わり、というお店もあるなか、魚伝では一匹一匹ブラシを使ってていねいに洗う)
続いて、塩汁に漬け込みます。塩はまろやかな甘みがある「内モンゴル産の古代天日塩」を使用。添加物は一切使いません。魚と塩だけの勝負です。
そして魚に包丁を入れてから干すまでの作業は、魚の鮮度を落とさないために一気に行われます。一連の作業が終わるまで休憩はナシ! すべては極上の干物を仕上げるため。ひたすら誠実に魚と向き合う干物づくりが行われているのです。
一度食べたら他のものは食べられない!リピーター続出の「真あじの開き」
そんな魚伝のこだわりを尽くした干物のなかでも、いちばん人気は「真あじの開き」。『一度食べたら、ほかのアジの干物は食べられない』とおっしゃるお客さまもいらっしゃいます」と良磨さんが笑顔で語ります。
出典:魚伝(魚伝で最も長い歴史を誇り、絶大な人気を誇る真あじの開き。フォルムも身も美しい!)
原料は地元水揚げのもの、そして日本国内のあらゆるアジの中から目利きされた良質なものを使用しています。
アジもほかの魚と同様、まずはさばいて内臓を取り除きます。
出典:魚伝(アジに包丁を入れ、手際よく開く。干物に頭がついているアジは「きれいにアタマ割り」するのもポイント。「アジの開きは顔が命です(笑)」(良磨さん))
そののちしっかりと洗い、塩水に漬け込みます。「アジの身の厚み、脂のりを見極めて、旨みを最大限にいかす塩加減で漬け込みます」と良磨さんが説明します。「漬け込む時間も調整が必要です」。
魚伝では、塩汁は「臭みが出るから」と絶対に使い回しません。1回、1回新しいものを作っています。
そして「干し加減」も重要です。「ふっくら仕上げるために水分量をある程度残して、乾かし過ぎないように注意します」と良磨さん。
とはいえ水分が残り過ぎては身がボロボロになってしまいます。「ほどよい干し加減」を見極めるために、干している間は何度もチェックが欠かせません。すべての過程において、手を抜くことがない。じつにていねいな仕事で完成された、真あじの開きを焼いていただきます。
出典:筆者にて撮影(焼く前の真あじの開き。この時点で美しい……)
絶妙な干し具合の魚伝の干物は、解凍してもドリップが出ません。水分量が多いせいか、あっという間に焦げたりすることもなく、美しい焼き上がりに!
出典:筆者にて撮影(拡大してみていただきたいほど、見るからにふっくらとした焼き上がり)
静かに脂をたたえて、もっちりふくらんだ身に箸を入れると、みずみずしくジューシーでホクホクしっとり。乾いた感じがみじんもない! そして鮮やかな旨み。飲み込むのがもったいないほど! そして塩加減もきわめてナチュラルでやさしい。
出典:筆者にて撮影(ホクホクの身。ごはんにも、日本酒にもぴったり。どちらでも「多幸感いっぱい」!)
あれ。……そういえば、いま食べているのって「干物」だっけ……。
思わず忘れるほど「干物感」がない!
いうならば、くっきりと「旨み」が際立ち、身の弾力が増した「アジの塩焼き」状態。そして正直、アジの塩焼きより何倍も美味しい!
干物加工というと「保存性」のイメージがありますが、魚伝の干物をいただくと、「魚の旨みを存分に引き出す魔法」なのだとさえ思ってしまいます。
魚伝マジックがかかったアジの干物。お皿の上に、きれいに骨だけが残りました。
干物はじつは、アレンジしても美味しくいただけます。薬膳レシピ「アジの薬膳冷や汁」を作ってみました。アジ同様に血行を促進する効能があるみょうがと組み合わせた一品です。
「真あじの開き」を焼いてほぐしてボウルに入れ、水、味噌を加えてよく混ぜ合わせて冷やし、器に盛ったごはんにかけます。
スライスしたキュウリ、みょうがをのせ、白ごまをかけて完成。魚伝のアジの干物は旨みが強く、ふくよかなので、だし汁を使わなくても水でOK。コクうまで、身体の底から元気がでてくるような「アジリッチ」な味わいに仕上がります。
出典:筆者にて撮影(アジの薬膳冷や汁。冷や汁のふるさと・宮崎県人の筆者ですが、これからはもう魚伝の「真あじの開き」一徹で、冷や汁を作ろうと思います……)
思わずにっこり。幸せ感あふれる「真あじのみりん干し」
魚伝でアジの開きとともに絶大な人気を誇るのが「真あじのみりん干し」。
出典:魚伝(真あじのみりん干し。秘伝のタレで、魚が苦手な人にも美味しいと好評だそう)
こちらはアジの頭を落として、腹を割って内臓をだしてからきれいに洗い、手開きにしてから、特製のタレに漬け込みます。
タレは醤油、酒、みりん、三温糖を使用。「くどさのない、ほどよい甘みに仕上げたいので三温糖を使っています」と良磨さん。タレも使い回すことなく、都度、新しいものを作ります。そののち、適度な干し加減で仕上げます。
こちらも、絶品!
しょっぱさがなく、ベタベタした甘みもなく、ひたすらにまあるい、ホッとする「癒し系」の味わい。食べたとたんに思わず「口角があがって」にっこりしてしまいます。
出典:筆者にて撮影(てりっと焼きあがった、真あじのみりん干し。なんだかとっても「チャーミング」な味わい)
そして、ごはんと一緒に食べるとお米の甘みがより感じられてとっても美味しい。そして幸せ。
こちらも薬膳アレンジ。「真あじのみりん干しタルタルサンド」に。癒し系の味わいは、ごはんのみならず、じつはやわらかめのパンにもぴったり。血行促進に役立つたまねぎ、らっきょうをプラスしたサンドイッチです。
今回はフォカッチャを使用。焼いた真あじのみりん干し、ゆで卵をつぶし刻んだ赤タマネギ、甘酢らっきょうを加えてマヨネーズで調味したタルタルソース、千切りにした青じそをはさみます。
出典:筆者にて撮影(真あじのみりん干しタルタルサンド。ぜひやわらかめのパンで)
真あじのみりん干しと、フカッとしたパン、卵の優しい風味はぴったりの相性。らっきょうがほどよいアクセントになって美味しくいただけます。
それにしても、どんなふうに食べても魚伝の干物には「幸せ」があふれています。冷蔵庫にいつも入っていてほしい。きょうは仕事でへこんだけれど、「おうちで魚伝の干物が待っていてくれるからだいじょうぶ」。そんな気持ちになれるのです。
プロ級フレンチが完成する干物!? 驚きの「アタラシイヒモノ」
じつは魚伝には近年、大きな話題を呼んでいるヒット商品があります。
その名は「アタラシイヒモノ」。フランスのゴエミヨで受賞歴を持ち、国内外で注目を集めるシェフ 田村浩二さんとのコラボレーションで完成した、いわば「フレンチ干物」です。
出典:魚伝(「アタラシイヒモノ」。フライパン調理で、簡単に美味しくプロ並みのフレンチが「干物」で完成!)
塩汁の代わりに塩や砂糖を加えたソミュール液や、ハーブ、スパイスを使用。フライパン調理で「アクアパッツァ」をはじめとする洋風調理が可能という、とんでもない「アップデート」を遂げた前代未聞の「進化系干物」は、これまでの干物のイメージを一変させる商品です。
伝統の技で干物を作り続けている良麿さんには、ずっと気がかりなことがありました。
まず、若い世代の「干物離れ」。「『グリルを使うと片付けが面倒』ばかりかそもそも『調理の仕方がわからない』『骨をとるのが面倒』と、なんだか干物のハードルが上がっていたんですよね……」と良磨さん。
さらに地元・真鶴は観光客が年々減り、若い人は仕事が少ないために町を出てしまい、急激に過疎化。賑わいがなくなり、かつては軒を連ねた干物店も魚伝含めて三軒になっていました。良磨さんには「干物で地元を盛り上げられないか」という思いもありました。
そんな折に、訪れた「新たな干物を作りたい」というオファー。食の領域の課題解決に取り組み、高付加価値商品のプロデュースを手がける専門家集団「dot science」からの依頼でした。
提案された新商品は、良磨さんの想像の域をはるかに超えていました。
「洋風干物」。しかも「アクアパッツァなどに使える干物」。
干物が洋風? 干物を調理!? と、たまげた良磨さんですが、思い切ってチャレンジ。これまでの技術をいかして、調味液の漬け加減や仕上げのハーブの量を試行錯誤しながら「アタラシイヒモノ」を完成させました。
トマトやニンニクのイラストが躍る、スタイリッシュなラベルがポイントのカラフルなパッケージの干物は、「野菜と一緒に食べられるメインディッシュができる干物」「ワインにも合う干物」「パーティーでも出せる干物」などの話題を呼び、次第に干物とは縁遠かった「若い女性」にも注目を浴びるように。販路も次々と拡大し、新たなお客さんも増えました。
アタラシイヒモノシリーズにはキンメダイ、サバなどがありますがもちろん、アジもラインナップに加わっています。
「アジ ハーブ&ガーリック」は、定番のアジの干物を清涼感のあるハーブとガーリックで「南フランス風」に仕上げた商品。
出典:魚伝(アタラシイヒモノ「アジ ハーブ&ガーリック」。ハーブの香りよい一品が仕上がる)
血行促進に役立つ食材を組み合わせて「アジの薬膳アクアパッツァ」を作ってみました。アジ ハーブ&ガーリックをフライパンにオリーブ油をひいて焼き、たまねぎ、トマト、ナス、パプリカを炒めて水を加えて15分程度煮込んだら完成。
アジは煮込んでも身がふっくら。そして、「身崩れしない」のも、干物ならではのメリット!
そして、ハーブ香る旨みが出た煮汁の美味しさったら! それが浸み込んだ野菜の美味しさったら! さらに、フレンチのシェフならではの絶妙な配合のハーブとガーリックの味付けで「ワイン飲みたい!」「シャンパンも欲しい!」(笑)。煮汁を浸すバケットもマスト! カラフルな野菜を従えた彩りある干物をいただくと、「干物概念」が劇的に変わります。
出典:筆者にて撮影(アジの薬膳アクアパッツァ。干物でつくったほうが成功します。絶対)
伝統の技があってこそのリデザイン。素晴らしいクラフトワークは和食だけではない、素晴らしい可能性を秘めていたのです。
海外からのゲストも絶賛!「炉端焼き」の干物レストラン
アタラシイヒモノがデビューして、7年が経過しました。「最初はどうなることかと思いましたが、トライしてよかったと思います(笑)」と良麿さん。「これまでなかなか話題に上ることがなかった干物ですが、メディアの取材も増え、注目される機会が格段に増えました」と笑顔で語ります。
かつては干物の行く末を心配していた良麿さんですが、いまでは「干物の可能性」を信じ、その未来に希望と期待を抱くようになりました。
そして、良麿さんは、2024年、さらなる「干物の躍進」となるステージともいえるお店をオープンさせました。
「炉端焼き 傳」は、魚伝の干物を炭火焼きで楽しめるお店です。
出典:魚伝(炉端焼き 傳。真鶴港のほとりに位置する)
「これまで、真鶴には干物を食べられるお店がありませんでした。炭火で焼いた、最高に美味しい状態の干物を召し上がっていただきたかったんです」と良磨さんがその想いを語ります。
出典:魚伝(干物をいただけるお店とは思えない、スタイリッシュな店内)
お客さんの目の前で、ていねいに炭火で焼かれた干物は、大好評。週末には行列ができる人気店になりました。
出典:魚伝(炭火でじっくり干物を「ベストな状態」に焼き上げる。「フライパンでもできますが、やはり炭火焼きの美味しさを味わってもらいたくて」(良麿さん))
もちろん、アジの干物定食も大人気。
出典:魚伝(「あじの一夜干し定食」。お米は羽釜で炊き上げた特Aランクの岩手県産「銀河のしずく」。小鉢の豆腐は湯河原の名店「十二庵」からとサイドディッシュにもこだわる)
出典:魚伝(オリジナリティあふれる干物メニューも人気。こちらは「さば玉丼」。サバのみりん干しとお店でふんわり焼き上げた卵焼きをのせた丼。しかもそえられた出汁をかけて三段階で味わえる!)
「傳で食べて美味しかったから、と『干物を買って帰る』お客さんが増えました」とうれしそうに語る良磨さん。
さらに、その味わいを楽しんでいくのは、日本人だけではありません。「最近は外国人のお客さんも多くいらっしゃいます」と良磨さん。「みなさん口々に、『美味しい』、『ベスト・フィッシュ!』って(笑)。『日本でいちばん美味しい魚』だと絶賛してくださる方もいらっしゃいました」。 思いもかけなかったゲストからの言葉を受けて、良磨さんには新たな目標ができました。
「海外にも、うちの干物を輸出できたら」。
和の食卓も、洋の食卓も彩る「ヒモノ」。世界各地で真鶴発の絶品ヒモノが愛されるようになる日も、そう遠くはないに違いありません。
■絶品「真あじの開き」や数々の干物は、魚伝公式サイトからお取り寄せください。